SNSで興味・関心が狭くなる?

スマートフォン(スマホ)の普及により、インターネットへのアクセスは一段と容易になりました。総務省が7月に発表した2018年版の「情報通信白書」によると、13歳から50代までの世代でインターネット利用率は約9割に達しましたが、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用目的は情報収集が多いことがわかりました。
このような利用の仕方はかえって興味や関心を狭めることになる……と白書は警鐘を鳴らしています。

10代後半でスマホ保有率約8割

情報通信白書は、日本のICT(情報通信技術)市場の動向から人工知能(AI)の動向までを網羅した白書です。人口減少期に入った日本では、働き手不足を解消するため、女性や高齢者、障害者など多様な人材が働きやすい環境を整えたり、地域の人たちが助け合う関係を作ったりするのにICTが役立つ可能性がある……と白書は論じています。
しかし、現実の日本人のICT利用状況を見てみると、そのメリットに逆行するような実態が見えてきます。

たとえば、高齢者とそれ以外の世代のコミュニケーションギャップです。
13歳から50代までの世代ではインターネット利用率は90%に上り、スマホ保有率は13歳~19歳で79.5%、20代・30代は90%以上がスマホを持っています。一方、年代が上がるにつれて保有率は下がり、70代になると18.8%とかなり低くなります。白書は、いつでもインターネットを利用できる世代と、利用が進んでいない高齢者世代とのコミュニケーションが円滑に取れなくなる可能性もある……と指摘しています。

「ネットの向こう」を信用しない日本人

FacebookやTwitter、InstagramなどSNSの状況を見ると、利用している人は約6割でした。しかし全体的な傾向として「ほとんど情報発信や発言せず、他人の書き込みや発言等の閲覧しか行わない」と答えた割合が、書き込みなどを行う利用者よりも多い結果になりました。
国際比較をすると、アメリカでは45.7%の人がFacebookで「自ら情報発信や発言を積極的に行っている」と答えていますが、日本の場合は5.5%にすぎません。オンラインで知り合う人への信頼度の国際比較でも、日本は欧米と比較して信頼度が低いという結果が出ており、日本人がSNSを情報収集ツールとして受動的に活用する姿が見えてきます。
ソーシャルメディアで自分の興味のある情報のみにアクセスしていると、興味・関心が限定され「逆にコミュニケーションを狭めることにもなりかねないことは留意しなければならない」と白書はまとめています。

今年度から小中学校で移行措置に入った新しい学習指導要領では、学習の基盤となる資質・能力として「情報活用能力」が掲げられています。この能力には情報を収集する力だけでなく、発信力・伝達力も含まれます。
日本人全体の傾向としてSNSへの抵抗感がある……ということを知ったうえで、これから学校でどのように子どもたちの発信力や伝達力、他者と協働して学ぶ力を伸ばしていくかを考えていく必要があるでしょう。ネットやスマホの安全利用を教えることは大切ですが、それがSNSへの抵抗感を助長させるようなことは避けたいものです。

(筆者:長尾康子)

※2018年版情報通信白書
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/

プロフィール

長尾康子

長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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