伸びるための準備期間[中学受験]

 “受験態勢を確立する”ということで、「少しずつでも成果が出てきている」という点をあげたが、実はこの判定が非常に難しい。なぜなら実力テストや模擬試験で「伸びた!」と思える変化が表れるには、真剣に勉強に取り組み始めてから少なくとも2〜3ヵ月の期間が必要だからである。つまりいくつかの漢字を覚えたり、いくつかの算数の問題が解けるようになったりしても、そのものがズバリ出題されない限り得点には結びつかないからだ。もし今の時期にググッと模擬試験で成績が伸びたお子さまは、おそらく2月ごろ(またはそれ以前)からの学習の成果が今出てきたと考えられる。

 このような成績の伸びに関連して注意したい点は、短期間の学習で成果が出ないことに不安を覚え、「学習方法を間違えているのでは?」「教材が悪いのでは?」「先生が良くないのでは?」とあれこれ迷うことである。そして迷ったあげくどんどんそれらを変えて、最終的に空中分解してしまうことである。お子さまに合わない学習方法や教材、または先生もたくさんいるであろうから、学習を始める時はいろいろ吟味する必要はあるが、いったん「これでやろう!」と決めたら、少なくとも3ヵ月はそれを信じて学習することが大切だ。ベストな先生・ベストな教材にはなかなかめぐり合えないかもしれないが、ベターな先生・教材でも、それを信じて活用することにより、「ベスト」にすることができるのである。

 もちろん一方で「見切り」も大切である。いくらやっても成果が出ないものは、すっぱり捨て去る勇気も必要であるということだ。その意味では塾選び・先生選び・教材選びは、1つの賭けであると言える。しかも万人にとってのベストな教材や先生はないと私は考える。例えばいくら評判の良い先生でも、お子さまにとってベストな先生とは限らないし、また過去においてはベストであったかもしれないが、今現在のお子さまの学力を伸ばすという点においてベストかどうかはわからない。

 顕著な成績の伸びを実感するためには、ある程度の期間が必要なことは前に述べた通りだが、「授業で先生の説明が分かるようになってきた」とか、「解ける問題が、10題中3題から5題になってきた」とかの、ささやかな現象を見逃さないことも自信を持つためには大切なことである。そしてこれらの現象が多くなり、日々の学習に対しても自信をもって集中して取り組めるようになってくれば、模擬試験で顕著な成績の上昇が表れる日も近いと思われる。「受験態勢の確立」は成されたと考えて良いだろう。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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