2017年度中学入試 時事問題の傾向『ベネッセ進学フェア』

2017年5月、東京国際フォーラムで、中学受験を検討している保護者のかたやご本人向けに『ベネッセ進学フェア2017』が開催されました。同フェアでは、中高一貫校約180校が一堂に会し、直接先生に質問することもできるほか、学校選びの相談ブースが設置され、専門家による講演会も開催されます。
その中から、社会科入試問題の専門家、早川明夫氏による講演の内容を2回シリーズでお届けします。

■時事問題とは?

・いつまでのできごとが出題される?
時事問題とは、主に受験の前年に起こった日本や世界の主なできごとを扱った問題です。多くの学校では、夏休み中に問題を作成するため、前年8月あたりまでのできごとが取り上げられることが多いのですが、内容によっては12月のできごとが翌年の入試に出題されることもあります。
たとえば2017年度には、前年11月のパリ協定発効、12月の米大統領選でのトランプ氏当選が出題されています。

・周年問題 「あれから?年」のできごとをチェック
また、入試の年・前年から見て節目の年に起こったことを出題する「周年問題」も、時事問題の一種といえます。たとえば2017年を基準とすると…
・550年前 1467年 応仁の乱が起こる
・150年前 1867年 大政奉還が行われる/王政復古の大号令が出される
・80年前 1937年 日中戦争が始まる
等の大きなできごとがありました。「応仁の乱」は、呉座勇一氏の著書がベストセラーになったことでも話題となりましたね。
2018年を基準にした「あれから?年」の表も、ぜひお子さまと一緒に、年表をもとにつくってみてください。

■時事問題の出題が増えている理由は?

時事問題は、例年8~9割の学校で出題されています。2017年度の時事問題出題率(首都圏の国・私立100校の分析による)は、男子校で73%、女子校で97%、共学校で87%、全体で86%となりました。
社会科は、国の政治の主人公として、基礎的な知識やものの見方・考え方を培う教科です。しかも、2016年に選挙権が18歳以上に引き下げられたこともあり、小さい頃から政治や社会に対するものの見方や考え方を培うことがますます大切になってきています。また、時事問題に興味関心を持っている子どもは好奇心が強く、学習意欲が高い傾向があります。このようなことから、時事問題の出題が増えていると考えられます。

■2017年度入試で頻出した時事問題は?

参議院選挙2016、東京都知事選、18歳選挙権など、選挙関連は非常によく出題されています。国政選挙、地方選挙、知事選挙のしくみとともに、被選挙権年齢、任期や議員定数など、基本的な数字はまとめて覚えておきましょう。一票の格差を是正するために、島根県と鳥取県、徳島県と高知県をひとつの選挙区にした「合区」についても出題されています。強行採決の問題点について憲法の条文と関連させて説明させる(雙葉)など、議会政治そのものについて問う問題も見られました。

イギリスのEU離脱、2016リオオリンピック、オバマ米大統領の広島訪問、難民問題についても多く出題されました。難民や移民については、今後も出題の可能性が大きいと思われます。世界の難民の数は2015年末現在6530万人と第二次大戦後で最多で、最大の難民発生国はシリアです。新聞やニュースに国名が出てきたら、必ず地図帳を開いて位置を確認する習慣をつけたいものです。
難民や移民の問題は、日本からは遠いできごとと思われがちですが、実際はそうではありません。たとえば慶應義塾中等部では、リオオリンピックに関連して「日本からブラジルへの集団的な移民が開始された年」を選ばせる問題が出されました。答えは1908(明治41)年で、日露戦争後です。日本は日露戦争で勝利を得たものの賠償金を得られず、経済が困窮していたことがその背景にあります。難問に見えますが、小学校の教科書に出ています。
このほか、飛鳥時代、百済の滅亡により、朝鮮半島から渡ってきた渡来人も移民・難民といえますし、1931年の満州事変以降には、日本は中国東北部の旧満州国に多数の移民を送り込んでいます。時事問題と歴史を結び付けて考えることも大切だと思います。

その他、伊勢志摩サミット、世界遺産(国立西洋美術館)、天皇の生前退位についても、かなり出題されています。天皇の生前退位は、2018年度入試でも出題される可能性が大きいと考えられます。関連して、憲法1条(天皇の地位・国民主権)や皇室典範についても出題されました。

■憲法の条文は37%の学校で出題

憲法の条文は、37%の学校で出題されました。最も多かったのは25条(生存権)で、社会保障関連での出題が多く、第2位は9条(戦争の放棄)でした。三権分立など、政治のしくみの基本は憲法の条文を見ながら復習するとよいでしょう。

■よく出る時事問題の特徴は?

入試でよく取り上げられる時事問題には、次の特徴があります。

・社会科の学習内容と関連しているもの
時事問題に関連し、教科書で扱われている事項について考えさせる問題がよく出題されます。

・社会科と理科の両方で取り上げられている内容(自然災害など)
地震、火山の噴火、台風などの自然災害は、社会と理科にまたがる内容になります。自然災害の起こるしくみについては、理科の教科書を確認し、よく理解しておくことが大切です。

プロフィール


早川明夫

社会科入試問題研究の第一人者。大学付属中高の教頭を経て、文教大学で社会科の教員養成にあたった。現在、文教大学地域連携センター講師。主な著書に『応用自在』『考える社会科地図』『総合資料日本史』『地図っておもしろい!』(監修・執筆)ほか多数。『ジュニアエラ』の総監修者。

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