「甘やかす」と「甘えさせる」の意味の違いとは? 子どもの自立心を育てよう

「甘やかす」と「甘えさせる」は似て非なるもの。これらを混同し、「甘やかしてはいけないから」と、子どもが親に甘えることを許さないでいると、心の発達に支障が生じる恐れがあります。それでは、「甘やかす」と「甘えさせる」はどう違い、それぞれ子どもにどのような影響を及ぼすのでしょうか。具体的な場面を交えてご説明します。

この記事のポイント

「甘やかす」ことと「甘えさせる」ことの違いとは?

始めに、「甘やかす」と「甘えさせる」の違いを簡単に説明します。

「甘やかす」とは?

まず「甘やかす」は、多くの場合、物理的・金銭的な要求に応えてあげることを指します。おもちゃやお菓子が欲しいと言ったときにすぐ買い与えてしまうのは、甘やかす行為といえるでしょう。本当は自分でできる着替えや片付けを親の都合でやってしまう「先回り」も、子どもの視点から見たら「甘やかされている」ことになります。

「甘えさせる」とは?「甘やかす」との違い

対して「甘えさせる」は、気持ちの面での要求に応えてあげることを指します。「抱っこして」「ねぇ聞いて」という気持ちを受け止めて、スキンシップをしたり話を聞いてあげたりすることです。「甘えさせる」は、物やお金がなくても愛情で子どもの心を満たしてあげられます。

ただ、この違いはあくまで一例であり、はっきり分けて考えられるものではありません。「甘えさせる」に当てはまる行為も、場合によっては「甘やかし」に入ってしまうことがあります。もちろんその逆もあるでしょう。親子関係、子どもの性格によっても違います。

大事なのは、「保護者のかたが子どものことを思ってその行動に出ているかどうか」、そして「子どもの心が本当に満たされているかどうか」です。今回の例を参考にしながら、「甘やかす」ではなく「甘えさせる」ができるように、関わり方を考えてみましょう。

子どもにとって「甘え」は良いもの?悪いもの?

「甘え」という言葉にある間違ったマイナスイメージ

一般に「甘え」という言葉は、良くない意味で使われることが多いでしょう。たとえば、「あの人は甘えている」という場合、「自分でできることをせず、相手の好意に寄りかかっている」といった非難が含まれています。そのため、子育てでも「甘えは良くないもの」と捉えてしまうことがあるのです。

しかし本来、子どもの健全な成長のためには適度な「甘え」は欠かせません。にもかかわらず、「甘え」にマイナスイメージを持つことが多いのは、「甘えさせる」と「甘やかす」が混同されやすいからでしょう。マイナスイメージがあるのは「甘やかす」であり、「甘えさせる」ではないのです。

「甘えさせる」ことの重要性

それでは、「甘えさせる」とはどのような行為を指すのでしょうか。子どもの「甘え」は、親の愛情を求める行為といえます。スキンシップを求めて抱きついてきたり、「見て見て!」と自分に目を向けさせようとしたり……。ときにはわがままを言って保護者のかたを困らせることもあるでしょう。子どもはそうした言動が受け入れられることで、「自分は親から愛されている」と安心します。それを繰り返すことで、徐々に自分に自信を持てるようになり、自立心が高まっていくのです。これは、「甘えさせる」ことで気持ちが満たされたからこそ現れる結果といえます。

過保護や過干渉の根底には「甘やかし」があることも

「甘やかす」は過保護な行動?

一方「甘やかす」行動は、子どもができることを保護者のかたが先回りしてやってしまったり、我慢すべき場面で我慢をさせなかったりすることです。たとえば、子どもが自分で靴を履こうとしているのに、「時間がかかるから」と保護者のかたが履かせてしまう。公共の場で騒いでいるのに注意しない。こういった行動は「甘やかしている」といえます。過保護や過干渉といわれる接し方の多くも、こうした「甘やかし」が根底にあるようです。

甘やかすことでの悪影響

仕事に子育てにと忙しいなかで、先回りをせざるを得ないことはあります。過干渉も、子どもを心配する気持ちがあるからであり、絶対にNGとはいえません。ただ、過度に甘やかして育てると、精神的・社会的な自立が阻害される恐れがあります。それは、保護者のかたも望んでいないはずです。

子どもの自立には、さまざまな経験が必要です。過度に甘やかす行為は、その機会を奪ってしまう可能性があります。「靴を履く」「ボタンを留める」も、自分で何度も経験したからできるようになるもの。「ぶつかってしまったときに友達に謝る」「忘れ物をしたことを先生に知らせる」も、失敗を経験したからできることです。経験しないままでは、たとえ大人になってもできるようにはなりません。

また、おもちゃやお菓子をすぐに買ってしまったり、おこずかいを際限なく与えたりする行為も危険。「要求すれば何でも買ってもらえる」「もっと高いものが欲しい」というように、いつまでも上を求めるようになるからです。子どもだけでなく、いずれ保護者のかたも苦労することになります。「甘やかす」は、子どものためにはならない行動。「甘えさせる」と混同しないように注意していきましょう。

子どもは何歳まで甘えさせてよい?

「甘えさせる」は親側の意志でやめなくてよい

よく育児・教育関連の書籍や雑誌で、「子どもは〇歳まで甘えさせてよい」といったアドバイスを見かけることがあります。しかし、これには定説があるわけではありません。自立のペースはそれぞれの子どもで大きく異なりますから、あまり気にする必要はないでしょう。

「もう〇歳だから」と、突然甘えることを許さなくなれば、子どもは「自分のことを嫌いになったのかな」と感じてしまうかもしれません。そうなれば、子どもは不安になり、自立心が育たなくなる可能性もあります。子どもが十分に保護者のかたに甘えることで情緒が安定し、自立を始めると、過度な「甘え」は自然と見られなくなるはず。わざわざやめる時期を決めなくても、成長とともになくなっていくものなのです。

親子間だけでなく家族全員で安心できる雰囲気づくりを

「甘えさせる」は、子どもの気持ちを尊重して受け止めてあげること。ただ、なかにはうまく甘えられない子どももいます。夫婦喧嘩が絶えなかったり、緊張した空気の家庭の中で育ったりした子どもは、その傾向が強いそう。もちろん、子どもの性格にもよるため、「甘えてこないから」といってすべての家庭が当てはまるわけではありません。ただ、もしそういった状況の場合、心が萎縮して自立心が育ちにくくなる可能性があります。

子どもが甘えてこないのは、自立心が育ってきたからなのか、それとも甘えられないからなのか……。それを見極めてあげることも大切です。もし甘えられない状況であるなら、保護者のかたからスキンシップを取っていくのもよいでしょう。そして、親子間だけでなく家族全員がお互いの考えを尊重し合い、仲良く生活することを心がけていけるとよいですね。

「甘やかす」ことと「甘えさせる」ことの違いを理解して子どもと接しよう

「甘やかす」と「甘えさせる」は別物ですが、どちらか判別しづらい場合もあります。たとえば、普段は自分で服を着ている3歳児が「ママ手伝って!」と駄々をこねるケース。保護者のかたに甘えたくて主張しているのかもしれませんし、単に自分で着るのを面倒くさく感じているのかもしれません。こうした場合は、子どもの性格や状況、そのときの子どもの気持ちなどを踏まえて判断しましょう。

「甘やかす」行為は、絶対にNGなものではないです。習慣になるくらい繰り返せば悪影響がありますが、一度や二度のことで即座に問題が生じるわけではありません。過度に心配して「甘えさせる」こともできなくなってしまったら、その方が問題です。迷ったら要求を受け入れてもよいでしょう。子どもへの愛情を忘れず、子どもの将来を思って行動すれば、その気持ちは必ず伝わっていくはずです。

まとめ & 実践 TIPS

同じに見える行動でも、それが「甘えさせる」なのか「甘やかす」なのかは、保護者のかたとその子どもにしかわからないもの。愛情表現の方法も、甘えさせる方法も、きっとそれぞれ違うはずです。今回紹介した違いを1つの参考にしながら、自分の行動を振り返ってみてください。それぞれの「甘えさせる」を見極め、愛情を注いでいきましょう。それが、お子さまの自立心を育てることにもつながっていくはずです。

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