不登校だった子どもは、どんな大人になる? 不登校の先にあるもの[不登校との付き合い方(9)]

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不登校だった子どもはどう成長するのでしょうか。保護者としては、このまま引きこもりになってしまうのでは、と心配でもあります。10年後、どんな仕事をする大人になるのか、そのときに不登校という体験は、どのようにその人自身に影響するのか。「不登校新聞」編集長の石井志昂さんに伺いました。

この記事のポイント

大人は、「その先」が気になるかもしれないけれど、大丈夫

小学校・中学校の時期に不登校の子どものうち、85%は高校に進学しているというデータがあります。進学しなかった15%の人も、高卒認定試験を受けている可能性もありますので、かなりの子が進学の道を選んでいます。

さらにその後の就職に関していえば、ほんとうにありとあらゆる職業の人がいます。消防士、大工、主婦、会社員、学校の先生、弁護士、タレントになった人。不登校だったのに堅い職業になんてつけるの?といわれたりしますが、県職員などの公務員になっている人もいます。

このように多くの不登校経験者が、さまざまな職業・職種に就いています。不登校から20~30年たった大人たちに会ってみて、私がいつも感じるのは、「普通のおじさん、おばさんたちだな」ということです。

不登校時代、いつでもどこでも帽子を深くかぶって、自分の顔をあまり見られないようにしていた寡黙な少年がいました。その子に15年後に会ったら、ただのおじさんになっていました。当時、とてもキツイ目をして厳しい顔つきをしていたのが、透明感のない目をしたおじさんになっていたのです。「昔はずっと帽子をかぶっていたよね」と言ったら、「ああ、いまでも工場勤務だから、帽子はかぶっていることはあるよ。そんなこともあったね」と、自分でも忘れていたくらいでした。

もちろん、何の波風も立たず葛藤もなく過ごしていくわけではなく、苦労はあるだろうし、つらいことも経験すると思います。でも、それは不登校ゆえではないでしょう。自分のやりたいことが少し見つかって、それを仕事にしようとしたら全然できなくて怒られるばかりだった、ということもある。結婚したり、何かに成功したり楽しいこともある。そんな「普通の人生」を歩んでいるという意味で「普通のおじさん、おばさん」になったんだと、私は思います。

オンラインで取材に対応してくださった石井志昂さん

不登校が終わるのは、思春期の終わりを意味する

では、そんな普通の大人たちになった、元・不登校の子どもは、いつ不登校を終わらせたのか……。それには、保護者や先生、大人たちが考えるよりも時間がかかっていると思います。

大人の多くは、とにかく不登校を終わらせることが大事だと考えていますよね。たとえば、学校にまったく行けなかった子が保健室だったら登校できるようになったときなどに、そこで不登校は終わったと言いたがります。でも、子ども本人にとっては、学校に戻ったというだけで、「不登校」の終わりを示すわけではありません。

不登校というのは、学校に対して体が動かなくなったという状態です。苦しかったことに決着をつけるための時間の長さは、人によって違うのだろうと思います。

半分くらいの人にとっては、不登校が終わるのは、大人になったときでしょう。不登校とは思春期のことだった、という見方です。そして、僕もそうですが、半分くらいの人は大人になってからも、不登校ということを良くも悪くもずっと抱えています。それくらい厳しくつらいことだと、保護者や学校の先生には知ってほしいです。

学校に行けないと言う子どもに、登校を強要しないでほしい

精神科医の明橋大二先生は、不登校は「心がオーバーヒートした状態」だと表現しています。まるでサーモスタットが発動してモーターのスイッチが切れるように体が動かなくなる、つまり安全装置が発動している状態だといいます。

だから、間違っても学校に無理に早く戻そうとしないでほしいのです。学校に行けないというのは非常事態としてとらえてほしいです。焦って学校へ子どもを戻らせて、それで不登校の問題は終わった、とするのでは、不幸が連鎖してしまいます。不登校の子どもは学校を危険な場所と感知しているということを、周りの大人は知っていてほしいし、だからまずは学校へ行かせないようにしてあげてほしいです。

学校に行けなくなった原因である「つらいこと」がなくなる、あるいはそこから真の意味で立ち直る、といったことでしか、実際の不登校は終わらないのです。

不登校すると子どもは心に傷を負います。そして、自分と向き合い、親との関係を再構築するという時間をもちます。そういう意味で、不登校は成長の過程のひとつなのです。筋肉がつくのも、筋肉が傷ついてそれを再構成することで強くなる、それと同じではないかと思っています。

まとめ & 実践 TIPS

不登校は、成長する過程で起こることで、学校に行けたら終わるものではない、と石井さんは言います。ほんとうに不登校が終わるのは、大人になった時であり、そこに要する時間は人によって異なるでしょう。人生には曲折がつきものであり、不登校もその過程のひとつ。まずは、学校に行けないほど傷ついている子どもを、安心して過ごせる家庭で見守ることが大切なのです。

プロフィール


石井志昂

『不登校新聞』編集長。1982年生まれ。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。17歳から不登校新聞社の子ども若者編集部として活動。不登校新聞のスタッフとして創刊号からかかわり、2006年に編集長に就任。現在までに不登校や引きこもりの当事者、親、識者など、400名以上の取材を行っている。

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