多様性社会で特に身につけたいのは「共感力」。 どう伸ばせばいい?ボーク重子さんに聞く! これからの子どもを幸せにする「非認知能力」の育み方~Lesson3 共感力

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グローバル化・多様化が進む昨今、いろいろなバックグラウンドをもつ人たちと共に生きていくために、非認知能力の中でも「共感力」の重要度が増してきています。

「非認知能力」が、子どもの教育においても重要視されているアメリカで子育てをしてきたライフコーチのボーク重子さんに、「子どもを幸せにする《非認知能力》の育み方」について連載でお伺いしていきます。
第3回目の今回は、相手のことを理解する「共感力」について、お話を伺いました。

この記事のポイント

共感力は、相手を否定しないことから

【おうちのかたのお悩み】

Q.子どもが自分の言いたいことばかりを話し、まわりの友達や親の話はまったく聞きません。またそのせいか、友達とケンカになることが多く、子ども自身もイライラしています。自分のことばかりではなく、相手の気持ちも考えられる子になるには、どうすればいいですか?

ボークさん:誰でも《自分》の話がしたいですよね。子どもが相手の話を聞かずに自分の話ばかりする時には、「そうなのね。教えてくれてありがとう。〇〇ちゃん(相手)はどう思っているかな?」と一度子どもの気持ちを受け止めたうえで、他の子がその場にいればその子に、またいない時であれば、子どもと一緒に相手の気持ちを考えてみるといいと思います。
ここで大事なのは、自分のことばかり話す子どもを否定せず、まずは子どもの話に耳を傾けることです。それでも自分の話ばかりをする場合は、「〇〇ちゃん(相手)の話も聞いてみようね、その後にまた聞くからね」と言って、子どもの話したい気持ちは受け止めつつ、我慢させることもまた必要です。これは自制心や自己管理能力にもつながりますので、妥協せずにきちんとルールを教えてあげたほうがいいでしょう。また、「こうしたほうがよかったのに」といった、親の正解を押し付けないということを意識すると、「親の共感力」を高めることにもつながります。

「共感力」には情動的な部分と状況把握の2つの側面がある

「共感力」には2つの側面があり、1つ目は情動的なもので、いわゆる「感情移入する力」です。もう1つは認知的な要素にもなりますが、「状況を正確に理解する力」です。
これら2つ合わせて「共感力」であり、たとえば友達が先生に叱られていた時に、「友達が叱られている」という状況を理解しただけでは、「叱られてかわいそうだな」といった感情が伴いません。反対に、感情だけの共感力だと、正確に状況が理解できていないので、よくわからないけれど友達と一緒に泣いてしまう……といったことになってしまいます。
この2つの共感力、どちらも育んでいくことで、「先生に叱られていて、かわいそう」と相手のことを思い、「大丈夫?」といった、やさしい声かけができるようになります。

ドキュメンタリー番組で疑似体験することでも「共感力」は育つ

「共感力」は非認知能力の中でも、これからますます重要になっていく力です。
その理由としては、世界のダイバーシティ(多様性)が進み、性別や国籍、年齢や障がいの有無なども含め、多様な人材を活かしていく社会になっていくからです。そういった社会で生き抜くためには、多様なバックグラウンドをもった人たちと、上手にコミュニケーションしていくためのスキルとして、「相手の立場に立って思いやれる力」というのが1つの鍵になります。

我が家では、娘の共感力を育むために、テレビやネットなどのドキュメンタリー番組をたくさん見て、伝記などの本もよく読みました。なぜなら、そういったものの中で、自分の経験がないことも疑似体験できるからです。
娘はドキュメンタリー番組でアフリカの紛争地域の子どもたちの様子を知り、自分で支援できることはないかと考え、レモネードスタンドを立ちあげました。その売り上げで文房具を買い、アフリカの孤児院に寄付しました。
「アフリカの子どもたちは学びたくてもえんぴつ1本買えない」という事実を知ること(経験すること)で、何か自分もできることはないかと考え、行動に移したのです。これは相手の立場を疑似体験することによって生まれた「共感力」です。

共感力が育つと「問題発見能力」も伸びていく

「共感力」が育つと、相手の状況や心情を想像することができるようになるので、さまざまな問題を協働して解決できるようになるだけではなく、さらに何かが起こる前に発見する力、「問題発見能力」も伸びていくので、問題が起こる前に解決できるというメリットがあります。何か問題が起きてから解決するよりも、起こる前に発見して対処していく能力がこれからは求められてきます。

まとめ & 実践 TIPS

「共感力」を伸ばしていくには、情動的共感と認知的共感の両方を伸ばすことが重要だとわかりました。またそのために、多様な社会で実体験を積むだけではなく、ドキュメンタリーや読書で疑似体験もたくさん経験することで、「共感力」は伸ばしていけそうです。

連載はこちらから
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プロフィール


ボーク重子

ICF会員ライフコーチ。Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。米ワシントンDC在住。30歳の誕生日を前に渡英、ロンドンにある美術系大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学。現代美術史の修士号を取得後、フランス語の勉強で訪れた南仏の語学学校で、米国人である現在の夫と出会う。1998年渡米し、出産。子育てと並行して自身のキャリアを積み上げ、2004年にアジア現代アート専門ギャラリーをオープン。2006年、ワシントニアン誌上でオバマ元大統領(当時は上院議員)とともに、「ワシントンの美しい25人」の一人として紹介される。一人娘であるスカイは2017年「全米最優秀女子高生」コンクールで優勝し、多くのメディアで取り上げられた。現在は、全米・日本各地で《非認知能力を育む子育て》《新しい時代のキャリア構築》についてコーチングと講演会を開催している。著書に『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)、『「非認知能力」の育て方』(小学館)など shigekobork.com 東京FMラジオ局のAuDee (Iphoneアプリ)、マイスタジオにて「ピンクdeワオ:自己肯定感コーチング」毎週月曜日から金曜日朝6時配信中。

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