成績が上がってゲームも上手になる方法。『スマホ脳』のハンセン先生が日本の子どもたちにアドバイス

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漢字に図形に英語……。小学生の勉強は段々と難しくなり、ゲームや動画は勉強よりも人気です。勉強嫌いの子どもから「友達は頭が良いからテストの点が高い」と聞くこともあります。

《頭が良い》とはどんな状態を指すのでしょうか。記憶力と集中力があって発想も豊かなら、どんな教科にも苦手意識を持たずにチャレンジできるかもしれません。実は、そういった能力を自分でアップさせる方法があります。そして、勉強だけでなくゲームも得意になるのです。

世界的ベストセラー『スマホ脳』『最強脳「スマホ脳」ハンセン先生の特別授業』の著者でスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン先生に、脳をきたえる方法を教えてもらいました。

この記事のポイント

運動で脳が変えられる。子どもにこそ知ってほしい

2021年、日本で一番売れた本*となった『スマホ脳』は、日々時間と集中力をスマホに奪われている私たちに警鐘を鳴らしました。でも、脳は運動することできたえられ、集中力を取り戻せます。その効果はもちろん子どもにも有効です。

「子どもの運動不足は世界的な問題になっています。運動によって身体能力だけでなく脳もレベルアップできることを子どもたちに知ってほしくて、児童文学の作家といっしょに『最強脳』を書きました。

スウェーデンでは多くの学校に本が置かれて、子どもたちが脳について興味を持ち、運動するモチベーションになっています。道で会った子どもから直接感想をもらうこともよくあります」とハンセン先生。

本が広く読まれた影響で、スウェーデンの学校では生徒の学力向上のために運動を取り入れるようになったそう。授業に集中できない子どもに対して先生は「静かに座って集中しなさい」ではなく「運動場を1周走ってきなさい」とアドバイスしますし、体育の授業の回数を増やした学校もあります。

でも、運動で脳がきたえられるとは一体どういうことでしょう。

私たちの脳は、まだサバンナにいる!

「私たちの脳は、4万年前にサバンナで暮らしていたころから変わっていません」

農耕開始前、ヒトがサバンナで狩猟採集生活をしていた時代は、私たちにとってあまりにも遠い昔です。しかし、人類の長い歴史を考えてみると、そのほとんどはサバンナ生活。人類の歴史を24時間に置き換えると、1日の終わり23時40分に農耕が始まり、インターネットやパソコン、スマホが登場したのはなんと23時59分59秒です。

『最強脳「スマホ脳」ハンセン先生の特別授業』(新潮社)より編集室が作成

「デジタル化が進んだのはほんのわずかな時間。人間の脳が進化するには到底足りません。人間の脳は《サバンナ生活》に適応しています。サバンナ生活で生き残るために役に立つのは、長い距離を速く走り、集中して獲物や敵のたてる小さな音も聞き逃さないこと。静かに机に向かって教科書を眺めることではないのです」

運動で集中力が上がり、ゲームもうまくなる?

じっと座って勉強に集中することが脳に向いていないと聞いて、「やっぱり」と納得する人も多いのではないでしょうか。そして狩りではなく勉強への集中を高めたい場合、運動が役に立つのだそう。

「子どもでも大人でも、運動した後に集中力が上がり、じゃまなものを無視しやすくなることがわかっています。

今の生活で集中力が必要になるのは、座っている時が多いです。でも、私たちの脳と体はそのようにできていません。狩猟採集民時代は食べ物を得ようと動いている時に最も集中力が必要だったので、運動すると集中が高まるようになったのではないかと考えています」

とはいえ、「運動が苦手、外で走り回るよりもゲームが好き」という子どもも多いです。そんな子どもたちに知ってほしいのが、運動をするとゲームもうまくなること。

「リーグ・オブ・レジェンドというオンラインPCゲームを使って行われた実験があります。ゲームスキルの高い10代の子どもたちを2つのグループに分けて、1つのグループは15分間運動してからプレイ、1つのグループは15分間座って過ごしてからプレイしました。結果、運動したグループは元々高いスコアをさらに10%上げました

指先でプレイするゲームに運動が関係するのは意外かもしれませんが、ゲームのスコアを上げるためには集中力のほか、素早い判断やストレス耐性、記憶力も必要。運動によってそうした能力のレベルアップが可能になるのです」

どんな運動でもOK。すべての動きに効果がある

ゲーム好きの子どもであれば、「運動するのはスポーツゲームでも良い?」と気になるのではないでしょうか。VRゲーム「Beat Saber」やNintendo Switch「マリオテニス エース」などゲームプレイでの運動でも脳に効果があるのか、ハンセン先生に聞いてみました。

「もちろん大丈夫です。どんな運動でも効果がありますし、パソコンを使って動いてもそれは運動としてカウントされます。『ポケモンGO』のように歩くことが促進されるようなゲームも素晴らしいと思っています。

運動が得意になる必要はなく、つまらない運動をする必要もありません。自分が楽しいと思う運動で、今よりも体を動かせば良いのです。運動をすることで成績が上がった研究結果は世界中で報告されています。脳は運動によって強くなるのです」

まとめ & 実践 TIPS

「得意じゃない」「短時間では意味がなさそう」と後回しにしてしまうこともある《運動》。でも、どんな運動でも脳に効果があると知れば、いつもより体を動かしてみたくなるのではないでしょうか。

脳は一生成長するそうです。子どもの成績アップだけでなく、大人の記憶力をアップし幸せな気分にしてくれる効果も。1駅分歩くことやダンスのゲームなど、楽しい運動の方法を親子で考えてみませんか?

*「オリコン年間BOOKランキング2021」第1位

通訳/久山葉子 イラスト・執筆/樋口かおる


第2回:テスト前日、時間がない! 『最強脳』精神科医に聞いた勉強の集中力をあげる簡単な方法

第3回:『スマホ脳』ハンセン先生に聞く。子どもとデジタルデバイスの付き合い方、どうしたらいい?

『最強脳—「スマホ脳」ハンセン先生の特別授業—』(アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳/新潮社刊)

世界的ベストセラー『スマホ脳』のハンセン先生が教える、脳をレベルアップする簡単な方法。幸せな気持ちになり、集中力・記憶力を上げるレシピを伝授

プロフィール

アンデシュ・ハンセン

アンデシュ・ハンセン

Anders Hansen。精神科医。ノーベル賞選定で知られる名門カロリンスカ医科大学を卒業後、ストックホルム商科大学にて経営学修士(MBA)を取得。2021年10月現在は王家が名誉院長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務しながら執筆活動を行う傍ら、有名テレビ番組でナビゲーターを務めるなど積極的にメディア活動も続ける。『一流の頭脳』が人口1000万人のスウェーデンで60万部が売れ、その後世界的ベストセラーに。前作『スマホ脳』は日本でも爆発的なヒットとなった。

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