不登校の子が一歩を踏み出すきっかけに。学校見学会や体験授業を活用しよう
- 育児・子育て
不登校の子は、学校と距離を置いている間にどうしても生活リズムが乱れやすくなります。そこに夏休みが重なると、完全に昼夜逆転してしまうなど、リズムの乱れがさらに強まることがあります。保護者にとっては「新学期が始まっても戻れないのでは」と気がかりになる時期です。
こうしたときは、日常と少し違う体験を通じて刺激を受けることも効果的です。新しい場所に足を運んだり、普段とは異なる人との関わりを持つことで、気分がリセットされ、生活リズムや意欲の回復につながることがあります。
そこでお薦めしたいのが、高校の学校見学や体験授業への参加です。気分転換や新しい発見の機会となるだけでなく、将来や進路について前向きに考えるきっかけにもなります。 この記事では、学校見学会や体験授業を有効に活用するためのポイントをお伝えしていきます。
生活リズムの乱れと学習の遅れへの対応策として考える
不登校の子どもを持つ保護者の方からよく聞かれる悩みのひとつが「生活リズムが不規則」であることです。起立性調節障害や睡眠障害などの理由から、そもそも午前中の活動が難しい子もいますが、「学校に行かなければ」というプレッシャーから解放される夜間のほうが活動しやすいというのは、不登校の子によくみられる状況です。
特に夏休みなどの長期休み期間は、学校だけでなくフリースクールなど居場所も休みになることが多く、「さみだれ登校で週1回程度は学校に通っていた」「週3日はフリースクールに通っていた」という子も生活のリズムとなる軸を失いがちになります。
また、学校に通うことの目的は学習だけではないものの、不登校になることで学習の遅れを心配される保護者の方も少なくありません。自学自習で学びを進めるのはエネルギー不足のお子さんには難しいものです。
一方、今後の進路を考えたときに、学力不足を理由にあきらめることがないようにと心配する保護者の願いもあるでしょう。
そんなときに考えてみてほしいのが、さまざまな進路先の学校見学や体験授業です。
「自分に合う」学校での体験が前向きな変化に
長いお休みが続いて、家にいる時間が長くなると周囲との接点がいつも以上に薄くなり、孤立感を深めてしまうことがあります。また、同世代の子たちが、イキイキと休みを楽しんでいる様子が目に入ると、余計に孤独を感じるかもしれません。
そんなとき、新たなつながりを得る機会として学校見学や授業体験を活用することが良い転換点になる場合があります。
また、体験授業は基本的に参加する子どもたちが「面白い学びがあった」「新しいことがわかった」「初めての体験ができた」などなにかしら得るものがあるように構成されています。
不登校経験のある子どもも通いやすい通信制高校などでは、入学希望者が安心して参加できるように基礎的な内容や楽しみながら学べる内容がテーマに選ばれています。学習に対して苦手意識のある子も「勉強って楽しいかも」と思え、学ぶ意欲を取り戻すきっかけになりやすいです。
肝心な「自分に合う」かどうかを見極めるためにも、実際に校舎を訪れ、授業を受けてみる、通っているお子さんたちの雰囲気を知るなど、よりリアルに近い学校生活を体験する機会として学校見学会や体験授業の活用は効果的なのです。
不登校経験のある先輩との出会いにも期待
かつては学校のカリキュラムや入試情報などの説明を聴く形式の「学校説明会」が主流でしたが、最近は学校見学会や体験授業、部活体験会など参加型の催しが増えています。体験授業は国語、数学、理科など教科ごとの授業もありますが、プログラミングやものづくりなど、学校によっては、その学校ならではの特色ある学科やコースの授業を体験できます。オンラインコースのある学校では、オンライン体験授業も開催されていて、家から出て外に出かけるのに抵抗がある子も、参加しやすいというメリットがあります。
学校見学会は学校の施設だけでなく、授業や部活動の様子もあわせて見学できる場合があります。参加者が自由に校内を散策するスタイルもありますが、在校生が案内をしてくれることも。その校舎に通っている在校生に様子を聞きながらだと、より理解が深まります。
また定時制や通信制、サポート校などには、不登校を経験した生徒も在籍していることが少なくありません。見学会や体験授業を通じて、在校生とコミュニケーションを取る機会があると、「不登校経験があっても、自分に合う学校と出会えればこんなふうに学校生活を楽しめるんだな」と思えるきっかけになるかもしれません。
保護者から「こんな学校もあるよ」の提案をしてみよう
学校見学会や体験授業の参加を、子どものやる気につなげるためには、保護者のかかわり方や声かけにもポイントがあります。
1.保護者と子どもが一緒に選ぶ
まずは学校ホームページや資料などで情報を集め、学校見学や体験授業の開催について調べてみましょう。親子で一緒に探してもいいですし、保護者のほうで子どもが興味を持ちそうなところをいくつかピックアップし、「こんな学校があって、授業の体験ができるみたいなんだけど行ってみない?」と誘ってみるのもいいでしょう。
不登校経験を持ち、その後自分に合う学校に通うようになった子からは、保護者が「いろんな学校を観に行ってみない?」と誘ってくれたこと、「通信制という選択肢もあるよ」と提案してくれたことが、安心感につながってうれしかったと聞きます。ぜひ保護者から見学や体験の提案をしてみてください。
2.あわてずスモールステップで進める
初めての場所にいきなり足を運ぶのはハードルが高いと感じる子もいるので、最初はホームページを見るだけでもいいと思います。少しずつ興味がわいてきたら「この学校はお昼からでも通えるんだって」「プログラミングの授業があるよ」「部活ではアニメ研究会も人気みたい」と特徴を伝え、「実際に見に行ってみない?」と誘ってみると乗ってくれるかもしれません。
ただ、当日になって、子どもが「やっぱり今日は行けない」と言うなら「また今度にしよう」と潔く見送る決断も必要です。向かっている途中にも子どもが気後れしていると感じたら、「体験が厳しそうなら見学だけでもいいと思うよ」と声をかけて安心感を与えたいです。
3.帰宅後にはふり返りの時間を
帰宅したら子どもに感想を聞いてみましょう。「今日授業をしてくれた先生、やさしそうだったね」「すごくきれいな校舎だったね」など保護者から気づいたことを伝えると、感想を引き出しやすいと思います。
「今日はいつもより早く起きられてよかったね」「久しぶりに電車に乗れたね」など頑張れたこと、成長を感じたことも子どもに伝えるようにすると、「また頑張ろう!」とモチベーションになりやすいと思います。
「あんまり面白くなかった」「疲れた」などネガティブな反応があるかもしれませんが、それもそのまま受け止めてあげてください。「自分に合わないところがわかったのも大きな収穫だね」「それだけ頑張ったということだよね。お疲れ様」と、次への一歩につなげられるといいですね。
進路へのイメージ、未来への希望がモチベーションとなる
明確な目的や目標がないまま、学習を進めるモチベーションを継続させるのは難しいものです。体験授業を通じて「ここなら通えそう」と思える進路先と出会えたら、学習への意欲もわきやすいです。
具体的な進路先が見つからなくても、「自分にも通える学校があるのかも」と思えるだけでも、先が見えない不安感は解消されるはずです。
見学や体験が子どもが進みたい未来を描くきっかけになるといいですね。
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