子どものしんどさに保護者が向き合うポイントは?蓑手 章吾さんのセミナーをふり返る【マンガでセミナーダイジェスト #4】

その道の専門家をゲスト講師に迎えて開催している「不登校ライフナビ」オンラインセミナーは、不登校でお悩みの保護者に向けて、ヒントになるようなさまざまなテーマを取り上げています。そうしたセミナーをマンガでふり返るのが「マンガでセミナーダイジェスト」。

不登校の理由や背景はさまざまで、クラスメイトや先生との人間関係、学校の授業や集団での学び方が合わないことなどが挙げられます。なかには「特に理由はなかった」とふり返る子もいます。また、起立性調節障害や発達障害の影響、最近では音や光などに敏感なHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)(※)も不登校の原因として増えています。

今回ご紹介するセミナーのテーマは「夏休み明け HSPと不登校─多様な教育機関とのつながり方」。オルタナティブスクール「HILLOCK」運営の蓑手(みのて) 章吾氏がお話しました。

なおマンガに登場する保護者像は実在の特定の個人ではなく、アンケートの結果に基づき平均的なケースを想定したモデル人物となります。

この記事のポイント

    蓑手さんが「教育をあきらめていない」と語る理由

    「HILLOCK」の理念は、「子どもが主役となり、ウェルビーイング(福利)を広げる学校」です。蓑手さんご自身は、公立小学校や特別支援学校で14年間勤務した経験から、どんな特性がある子でも「すべての子が楽しく成長できる学び」を大切にしていると語っています。


    小学校教員から済美養護学校という特別支援学校への着任が、蓑手さんの転機でした。そこで経験したのは、重度の知的障害のある子どもたちへの指導です。そこでは、適切な環境と方法さえあれば「伸びない子、成長しない子」というのはひとりもいないという気づきがあったと言います。学校に通っていると「みんなと同じ時間軸での成長」が重要だと考えがちですが、蓑手さんははっきりと「発達途上の子どもは、成長しないなんてことはない。人はいつでも変わることができる」と述べています。これは蓑手さんの信念の一つです。

    【参加者のご感想】
    ・「ひとは必ず伸びる」と聞いて、これからも安心して子どもをサポートしていこうと思った。
    ・方法論ではなく、大人の在り方の大切さを理解できた。

    「学びがつらい」という以前に「しんどいこと」がある子どもたち

    学びはもっと楽しいものであるはずなのに、評価や評定によってどうしても比較されてしまいます。そうしたしがらみをすべて取り払った結果、「学びは純粋にもっと楽しいものだ」と考えた蓑手さんは、自分にしかできない教育を目指して「HILLOCK」を立ち上げました。

    今回のテーマで取り上げているHSPについては、医学的な病名としての定義はなく、E.アーロン氏が提唱した「こういう感受性の高さ、刺激に敏感な気質を持つ人たち」という概念です。蓑手さんも「教育現場でもHSP気質の子どもは増えていると実感していますが、別の言い方をすれば、感受性がそのまま失われずに大事にされているとも言えるでしょう」と話しています。

    【参加者のご感想】
    ・これから先、不登校の子を取り巻く環境も良い方向に変化していくと感じられた。
    ・子どもを観察して話し合っていこうと思えた。

    子どもの感じかたはそれぞれでまったくちがうもの

    子どもが感じる不安や恐怖についても、「給食が苦手」にはじまり、「天罰がくだる」「幽霊がこわい」など、内容も感じかたの度合いもそれぞれにちがうもの。個々で異なる「感じかた」という目に見えない負担を感じている子どもたちに対して、保護者はどのようなサポートができるのでしょうか。

    感じ方が鋭敏すぎて子どもが拒否する場合、感じない大人の立場からは「やりたくないから甘えているだけではないか?」と悩むこともあるかもしれません。そこで、「ゴルディロックスの原理」(マンガ参照)を紹介しました。ストレス値の少ない環境で、楽しく少しずつチャレンジし続けること。「この挑戦によって新しい自分に出会える」という経験が、人生そのものの楽しさにつながることを、子どもだけでなく保護者にも伝えたいと締めくくられました。

    【参加者のご感想】
    ・多様な見方を知ったので自分の枠をはずすきっかけになった。
    ・親子ともに「85%安心できる環境」についてや、HSPの子どもも成長とともに変化していくのだと知ることができてよかった。

    ※「HSP(Highly Sensitive Person)」は、医学的な診断名ではなく、心理学的に提唱された生まれ持った感受性の傾向に関する概念です。医療行為や診断を意味するものではありません。

    プロフィール

    都内に4校展開するオルタナティブスクールHILLOCK初等中等部を運営。東京学芸大学の非常勤講師(「教育の情報化基礎」の授業を担当)、経済産業省「未来の教室」メンター、文部科学省学校DX戦略アドバイザー、デジタル庁デジタル推進委員も勤める。元公立小学校教員で、教員歴は14年。専門教科は国語で、教師道場修了。特別活動や生活科・総合的な学習の時間についても専門的に学ぶ。特別支援学校でのインクルーシブ教育や、発達の系統性、乳幼児心理学に関心をもち、教鞭を持つ傍ら大学院にも通い、人間発達科学で修士(教育学)を取得。特別支援2種免許を所有。ICT活用に関しても高い関心があり、多くのセミナーや勉強会に参加。ICT CONNECT21が主催する「先生発!最新のICT技術で教育現場を変えるハッカソン」ではグランプリを受賞。プログラミング教育で全国的に有名な前原小学校では、研究主任やICT主任を歴任。現在は教育コンサルタントとして、様々な民間企業アンバサダーや小学校研究会講師、執筆活動などを行っている。主著『個別最適な学びを実現するICTの使い方』『子どもが自ら学び出す!自由進度学習のはじめかた』(ともに学陽書房)、共著に『知的障害特別支援学校のICTを活用した授業づくり』(ジアース教育新社)、『before&afterでわかる!研究主任の仕事アップデート』(明治図書出版)など。

    蓑手 章吾  (みのて しょうご)オルタナティブスクールHILLOCK運営

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