キャッシュレスは、「お金を使いすぎてしまう」って本当?

消費税増税をきっかけに、キャッシュレス決済への流れが大きく加速しています。政府は2025年の大阪・関西万博に向けて、キャッシュレス決済比率40%とする目標を設定しています。民間消費支出に占めるキャッシュレス支払額は、諸外国に比べ低水準ながらも、2008年から2017年の10年間で、11.9%から21.3%とほぼ倍になりました。今回は期間半分で普及率倍増を目指そうとしています。

出典:一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ 2019」

現金に感じる「お金の重み」、そのワケは?

一方でキャッシュレス化は、「お金の使いすぎが心配」という声もあります。「キャッシュレスに関する意識調査」(2019年3月:ビッグローブ株式会社)によると、「現金1万円」と「キャッシュレスの1万円」ではどちらがよりお金としての重みを感じるかは、56.7%の人が「現金1万円」と答えました。「キャッシュレスの1万円」と答えた人は9.1%にとどまり、6倍以上の人が現金のほうに重みを感じるという結果でした。そう感じる理由は何でしょうか。

たとえば1万円を現金で支払う時、紙幣はクレジットカードやICカードよりも大きく見た目も鮮やかで、「壱万円」「10000円」の文字が目に飛び込みます。手で触って枚数を確認するなど、五感への刺激が多くあります。財布からお金を出し入れする間にも、「この後は少し引き締めなければ」などと、反省する時間もできます。

一方、キャッシュレスは、支払い時に端末やレシートに記載された数字を確認するだけです。短時間で支払いを終えるので、使い過ぎていないか、やりくりはできるかをその場で振り返ることが少なくなりがちです。

出典:BIGLOBE「キャッシュレスに関する意識調査」

クレジットカードでの支払いは現金の1.7倍使ってしまう!?

実際にキャッシュレス決済は現金よりも多く使ってしまうのでしょうか。日本クレジットカード協会の調査(2017年度)によると、支払いをクレジットカードで行う人は現金で行う人より1.7倍多く使うという結果でした。

使ってしまいがちな場面は、「衣料品専門店」「雑貨・文具」「タクシー」の支払いで、現金の2倍以上と高くなっています。共通するのは少し特別感のある消費場面です。

出典:日本クレジットカード協会「現金とクレジットカード間の購入単価格差に関する調査」

これらの「見えないお金」に対して重みを感じて使うには、やはり「見える化」することが大切です。家計管理の基本は、手取り収入から貯蓄分を先取りした上で、生活費の用途別に予算を立ててやりくりする方法です。費目ごとの予算は、現金の場合は袋分けするとわかりやすいのですが、「見えないお金」の場合は、場面に応じたカードの使い分けやWEB明細書での金額確認になるでしょう。

キャッシュレスで使い過ぎを防ぐためには

キャッシュレスでの家計管理には、次のような方法があります。

現金を主体に考えるAさん。まずは、日々の買い物分の生活費を現金で引き出します。クレジットカード払いにした時は、同額をその現金から差し引きます。手元の現金が減ってくことで「見える化」でき、キャッシュレス決済でも使い過ぎないと言います。

一方、キャッシュレス決済が主体のBさんは、銀行口座そのものを「ためる」「使う」に用途分けしています。引き落とし用の口座には一定額が入金されており、住居費や公共料金はクレジットカード経由で支払います。食費など日々の買い物は、1,000円以上になればクレジットカードを使います。クレジットカードは、所持する2枚を定番品の買い物と特別な買い物で分け、把握しやすい工夫をしています。

また、家計簿アプリでレシートを読み込み、支払い履歴をチェックしておけば、どのくらい使ったかが見えるようになります。当コーナーの「キャッシュレスをうまく利用して家計を見直そう」(※)にもあるように、キャッシュレス決済は、ポイント付与の特典などお得なケースも多いので、ポイントを上手にためて使うという工夫もいいでしょう。

キャッシュレス決済に付与されるポイントの管理法

キャッシュレス決済で付与されるポイントについては、お得感の後追いをするよりも、普段使っているクレジットカードや電子マネーで活用してみるのがよいかもしれません。その際、次のことを考慮しましょう。

(1)クレジットカードは年会費の額と利用頻度を考えて2~3枚にとどめる。
(2)付与されるポイントの還元率ができるだけ高いものを選ぶ。
(3)たまったポイントの使い勝手を考える。

便利な反面、決済手段が増えるとそれを管理する手間もかかります。せっかくためたポイントも、期限切れで失効しては意味がありません。自分の買い物行動を考え、まずは部分的に取り入れて使い勝手を試してみるのもよいでしょう。

一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ 2019」 P8
https://www.paymentsjapan.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/04/Cashless_Roadmap_2019.pdf

日本クレジットカード協会「現金とクレジットカード間の購入単価格差に関する調査」
http://www.jcca-office.gr.jp/topics/topics_67.html

BIGLOBE「キャッシュレスに関する意識調査」
https://www.biglobe.co.jp/pressroom/2019/04/190408-1

キャッシュレスをうまく利用して家計を見直そう
https://benesse.jp/kyouiku/201910/20191031-1.html

プロフィール


中上直子

ファイナンシャル・プランナー、消費生活コンサルタント。
マネー、消費生活、消費者教育などをテーマに編集・執筆、教材企画、講座講師、講師養成などで活動。日本消費者教育学会会員。
子どもにかけるお金を考える会メンバー
https://jpn01.safelinks.protection.outlook.com/
一般社団法人消費生活総合サポートセンター(Cサポ)理事
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