子の借金「奨学金」vs親の借金「教育ローン」 どっちを選ぶ? 知っておくべき違いと注意点まとめ

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教育資金を自己資金で賄うことが難しい……
そんな時に検討すべきが「奨学金」と「教育ローン」の利用です。
奨学金は日本学生支援機構(JASSO)が実施している奨学金(以下JASSOの奨学金)のほか、自治体や学校の奨学金や、企業が主体となって実施している奨学金制度もあります。
一方教育ローンは、日本政策金融公庫が提供している教育ローン(以下国の教育ローン)のほか、銀行や信用金庫など民間の金融機関が提供している教育ローンがあります。
このようにいろいろありますが、今回はJASSOの奨学金と国の教育ローンに絞って、特徴や選び方などをご紹介します。

この記事のポイント

奨学金と教育ローンの利用状況をデータで見てみよう

はじめにJASSOの奨学金と国の教育ローンは、どれだけの人が利用しているのかを確認したいと思います。
JASSOの資料によると、学生全体のうち、2017年にJASSOの奨学金の貸与を受けた学生は2.7人に1人(37%)となっています。他方、日本政策金融公庫が高校3年生を持つ保護者に対して独自に実施したインターネット調査(2019年2月、有効回答1294人)によると、国の教育ローンは10人に1人(10%)が利用しているという回答が出ていました。
これだけ身近な存在となっている奨学金と教育ローン。いったいどんな制度なのでしょうか?

JASSOの奨学金には給付型と貸与型がある

ここからはJASSOの奨学金を確認してみましょう。

JASSOの奨学金には、給付型奨学金と貸与型奨学金の2種類があります。
給付型は原則として返す必要がないタイプの奨学金です。給付型の利用には、学力が一定以上あることや、住民税非課税世帯など一定の要件を満たす必要があります。給付型の該当者は、併せて大学の授業料と入学金の減免(免除または減額)も受けられるようになります。

給付型には「予約採用」と「在学採用」があり、予約採用は高校3年生の春頃に、在学中の学校に、在学採用は、進学後の春か秋頃に、進学したの学校に申し込むようになります。なお給付型の奨学金が利用できるかどうかは、JASSOが提供する「進学資金シミュレーター」というWebサイト(※)で大まかに把握することができます。利用を検討している方はJASSOのホームページから確認してみましょう。
※進学資金シミュレーター
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/oyakudachi/shogakukin-simulator.html

一方、貸与型奨学金は、学生本人が借りて、学校を卒業後に学生本人が返していくタイプの奨学金です。貸与型には3種類あり、1つ目は返す際に利息が付かない第一種奨学金、2つ目は利息の付く第二種奨学金、3つ目の入学時特別増額貸与奨学金は、入学月に支給される奨学金の月額に一時金として増額して貸与される奨学金です。貸与型は給付型に比べると家計基準などが緩やかで利用しやすいものとなっています。しかし貸与型は、学生本人が将来の借金を背負うことにもなるため、奨学金を検討する場合は、まず返す必要のない給付型を、その後、貸与型(無利息)、貸与型(有利息)の順で考えていくとよいでしょう。

国の教育ローンは学生の保護者が利用するもの

国の教育ローンは、親などの保護者が借りて、保護者が返していくものです。返済は、早ければ借り入れた翌月から行われます。金利は固定金利となり、2020年11月2日現在の金利は1.68%(ひとり親家庭などは1.28%)となっています。返済期間は15年以内で設定することになりますが、「母子/父子家庭」や「交通遺児家庭」などの方は、18年以内で設定することが可能です。なお、国の教育ローンはJASSOの奨学金と併せて利用することができるローンです。日本政策金融公庫が実施した調査(※)によると、実際に国の教育ローンを利用している人の約半分は奨学金も利用しています。

※ 「教育費負担の実態調査結果(2019年度)」

以下にJASSOの貸与型奨学金と国の教育ローンにおける主な違いをまとめてみましたので、参考にしてみてください。

<JASSOの貸与型奨学金・国の教育ローン 主な違い>

【出典】
・JASSO
https://www.jasso.go.jp/index.html

日本政策金融公庫
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html

奨学金と教育ローンを利用する際の注意点

奨学金と教育ローンを利用する際は、どのような点に気を付けたらよいのでしょうか?

先述の通り、貸与型奨学金は、学生本人が借金を背負うことになるため、利用の際は返し方などを含めて子どもとよく話し合い、子ども本人が納得した上で申し込むことを基本としましょう。

また、奨学金を利用するとなった場合にぜひ心がけてもらいたいのは、奨学金の申し込み手続きは、親だけではなく、子どもも巻き込んで行うことです。親だけで手続きをしてしまうと、子ども本人が「借金をする」意識が薄れてしまうこともあり、結果として社会人になってから返還する意識も低くなってしまうこともあるからです。自覚を持ってもらうためにも、手続きは親子で行いましょう。

一方、教育ローンを利用する際に、注意すべきポイントは住宅ローンや老後資金との兼ね合いです。教育費がかかっているご家庭では、同時に住宅ローンを抱えているケースも少なくなく、その時期に無理なローンを組むと、親自身の老後資金にも影響を及ぼしてしまう可能性が高くなってしまいます。状況によっては、教育ローンだけではなく、奨学金との併用も考えるとよいでしょう。教育ローン破産を防ぐためにも、無理のない返済プランを立てることが何より重要です。

入学までにかかるお金を準備する場合の注意点

入学費用に関する注意点をご紹介します。JASSOの奨学金と国の教育ローンとの違いのひとつに、奨学金は給付や貸与が「入学後」に受けられるのに対して、国の教育ローンは、「入学前」にでもお金が受け取れるということが挙げられます。入学金の支払いは「入学前」に発生することが一般的です。また、教科書やパソコンなど、入学前に揃えなければならないものもたくさんあります。つまり、入学前にもお金はたくさんかかるのです。奨学金を申し込んだかたで、奨学金が支給される前に、入学までにかかるお金を借り入れたいのであれば、国の教育ローンを利用する手もあることを覚えておきましょう。

なお、JASSOには入学時特別増額貸与奨学金もあります。これは第一種奨学金又は第二種奨学金の申込者が、国の教育ローンの審査に通らなかったなど一定の条件のもと、入学月に増額して貸与が受けられる制度です。ただし、増額されるのはあくまでも「入学月」であり、「入学前」ではないことに注意が必要です。入学までにかかるお金の借り入れが必要な場合は、ろうきん(全国労働金庫協会)の「入学時必要資金融資」など、民間金融機関の融資を組み合わせたプランを考えてみるのも一案です。

まとめ & 実践 TIPS

JASSOの奨学金や国の教育ローンを利用する際は、制度の概要や商品の特性などをよく確認することが大切です。特に奨学金を利用するのであれば、子どもとともに理解することが重要です。また、奨学金の利用を考えている場合は、申し込みの締め切りについても学校でよく確認しておきましょう。これらのひと手間が、スムーズな利用につながり、ひいては、将来の奨学金やローン破産を防ぐカギとなります。

小沢美奈子

小沢美奈子

ファイナンシャルプランナー
大学卒業後、損害保険会社にて社員教育、研修講師などを経験。約12年間勤務後、外資系損害保険会社で営業に従事。ファイナンシャルプランナーとして活動開始後はWebや書籍などで記事執筆、セミナー講師、家計相談などを行う。2児の母。著書「本物の節約 残念な節約」(河出書房新社)

プロフィール



メンバー全員が子育て経験を持つ女性FPのグループ。各自の子育て経験や得意分野を活かして、消費者向けのセミナーや相談業務、執筆、監修などを手掛けている。教育資金に関する情報発信の機会も豊富。

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